大雨が続きますがみなさんいかがお過ごしでしょうか?今回は弊チームが手がける都市計画プロジェクト「鳥栖未来計画」の一環として実施中の、鳥栖市中心市街地3Dモデリングについてご紹介します。
1|鳥栖未来計画とは?
鳥栖未来計画とは弊チームが鳥栖市議会自民党鳥和会の依頼により実施する「鳥栖市中心市街地のまちづくりに関する調査及び包括的な提案」です。弊チームではこのプロジェクトを「鳥栖未来計画」と名付け、9月末の最終提案に向けて企画を進めています。詳しくは下のバナーをクリックしてご覧ください。※弊チームのホームページに移動します。
2|模型制作
模型はモノの形や位置関係などを手早く理解することができる便利な展示物です。博物館で目にした方も多いと思います。
例えば佐賀県立博物館には、佐賀の民家の伝統的形態であるジョウゴ造りを解説する模型が設置されています。模型はあらゆる方向から観察ができる点において、展示物として写真以上の価値を持ちます。展示されているジョウゴ造りの模型は、観覧者にとって当時の佐賀の風景をより豊かに想像するのに役立つことでしょう。規模は遥かに大きくなりますが、江戸東京博物館では多くの巨大模型を展示しています。江戸城の模型をはじめとして、江戸から東京へと移り変わる街の雰囲気をたくさんの模型でより具体的に感じることができる施設です。
今回の企画は、このように優れた展示物である模型を都市デザインにおいても活用できないかというものです。同時に3DCG技術を応用することで鳥栖市中心市街地の都市開発課題を発見、可視化することも目的としています。
佐賀大deモデリング
MAYAという業務用3Dモデリング/アニメーション用ソフトを使って建物を制作、3Dプリンターでプリントし、それを加工してパネル上に配置するのが制作の流れです。紙やパネルを切ったり貼ったり、という制作方法も検討しましたが、今後の活用の幅を考えて3DCGを使用することにしました。なぜなら、データさえ完成すればいくつも複製することが可能だからです。鳥栖の街の将来を描く際、模型を数パターン制作することは当然考えられます。従来のアナログな制作方法にくらべてデジタルデータは共通パーツの流用が容易であり、今回のプロジェクトにはぴったりだろうと思われました。
佐賀大学にモデリングソフトや3Dプリンターがあること、ソフトの扱い方が授業で勉強できることも3DCGでの制作を後押ししました。私が勉強したのは「映像・デジタル表現III」という授業です(2020年後期)。 全15回の講義のほとんどが、株式会社ニューロンエイジにて実際に3DCGモデリングをされている方から指導をしていただける授業でした。コロナ時代、オンライン授業が増えたことで実現された授業だと思います。とても貴重な経験となりました。ゲーム会社のお仕事の雰囲気をつかむことができることができ、個人的にもおすすめの授業です。授業外でも、佐賀大学のCLC(クリエイティブラーニングセンター)に行けば3DCG表現を得意とするたくさんの先輩方からアドバイスを頂けます。興味のある方はいちど覗いてみてはいかがでしょうか。
制作の様子
一般的な地図には建物の高さが書いてありません。平面上で完結するデータであれば問題ないのですが、今回は立体物を制作するためにこの部分には非常に悩まされました。解決法は地道な情報収集です。幸いゼンリンの地図には階数のデータがあるために1階約2.5mと仮定し、おおよその高さを出すことができます(建築の種類によって1階ごとの高さを調整するといったこだわりもあります。ホテルは少し高めに、昔ながらの民家は少し低めにといった具合です)。その後現地に出向いたり、Googleマップで確認を行ったりして全体から見た建物間の高さのバランスを調整しました。
高さが決まれば、今まで角柱でしかなかった建物のモデルを階ごとに分割し、細かい部分を作り上げていくことで完成です。3Dプリンターでプリント可能なギリギリの範囲をしっかり作りこむことで、より実物に沿った模型にすることを可能としています(図2,3)。
今回のプロジェクトで使用する3Dプリンターは積層プリンターという分類のものです。下から薄い層を何重にも重ねて立体物にしていきます。注意点として、場合によっては補助剤が必要な点が挙げられます。補助剤は印刷後完璧に除去することが難しく、小さな跡が残ってしまうためです。そのため、データ上ではよくできていても実際の仕上がりが異なる、ということがたびたび起こります。モデリングの際一定度のデフォルメや省略を行い、モデリングとプリント(試作)を繰り返すことでプリントされる模型をできる限りきれいな状態にしていきます。
今後の課題としては、大型建築物のモデリングとプリントです。鳥栖市には駅前不動産スタジアムやフレスポといった大型の建築物がいくつも存在します。3Dプリンターで印刷できるものは最大でも30cm四方ですが、これらの建築物はそれを優に超えてきます。また、スタジアムの鉄骨のような細かな部分は印刷できない可能性が高いです。これらの大型施設をどのようにプリントするかを考えていかなくてはなりません。
なお現在の進捗は下の3Dビューアーからご覧になれます。(タブレット端末は1本指で回転、2本指で視点移動、3本指でライトの位置変更。PCは左クリックで回転、右クリックで視点移動、Altキー+左クリックでライトの位置変更)。
3|佐賀大deラボの訪問
3Dモデリングデータのプリントは佐賀大deラボ様にご協力をいただいています。先日、佐賀大deラボ様にお伺いした際にお話をお聞きしましたので、活動報告を兼ねて佐賀大deラボ様をご紹介しようと思います。佐賀大deラボは佐賀大学本庄キャンパスの近くにある芳尾記念ラボの中にあります。黒い外観が印象的です。
佐賀大deラボとは?
佐賀大deラボ株式会社中山鉄工所が運営する「deラボ」ネットワークの一環として佐賀大学本庄キャンパスの近くにある芳尾記念ラボ内に拠点を構えています。deラボは佐賀大学・電気通信大学・バンドン工科大学にラボを構えており、大学生がアルバイトとして業務に関わっているとのことです。IoT技術・ものづくりを実践の中で学ばれていました。
佐賀大deラボには佐賀大学生が5名所属し、主な業務として3DCAD、加工機利用の運営、ロボット教室の指導をされています。私たちが佐賀大deラボ様にご協力いただいているデータへのアドバイスやプリントも、業務の一環とのことでした。ラボには4台の3Dプリンターやレーザーカッター、ハイエンドPC、制作された作品などが置かれており、もの作りに励みたい佐賀大学生なら誰でも使用可能とのことです。
佐賀大deラボでは制作したいものに対して親身にお話を聞いてくださり、弊チームも3Dモデリング印刷の際に技術的な相談をさせていただきました。みなさんの中で何かものづくりに挑戦したい!という方はぜひ佐賀大deラボ様に行かれてみてはいかがでしょうか?
今回の記事はいかがだったでしょうか。このように3Dモデリングを駆使して都市を再現している事例は、大手総合ディベロッパーを含めて全国規模で探してもほとんどありません。そのために困難に直面することも多々ありますがめげることなく、最終提案に向かって制作を進めていきます。
記事執筆:小澤健・坂田久美
2022/03/19 改稿
Make-Senseとは?
佐賀を拠点に活動する学生プロジェクト&デザインチームです。佐賀大学芸術地域デザイン学部の学生が中心となって活動しています。佐賀を拠点にイルミネーションデザインから都市計画の提案プロジェクトまで幅広い分野で活動しています。詳しくは弊チーム公式ホームページをご覧ください。
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